しばらく前に読んでおもしろかった本。
タイトルは、
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと
とにかく長いタイトル。最近は、こんな長いタイトルの本が人気なんだそうですよ。
出会い系サイトというと、アダルトなイメージがつきまといますが、そっちに興味を持って手に取ると、いい意味で期待を裏切られます。
著者の花田菜々子さんって何者？
著書の花田菜々子さんは、ヴィレッジヴァンガードの店長さんを経て、蔦屋書店など本に関わるお仕事をされてきた方。
現在は、HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEという日比谷シャンテの３Fにある本屋さんの店長さんをされています。
これだけで本好きだということは十分伝わってきます。
出会い系サイトXで何を？
その花田さん、ある日、出会い系サイトの存在を知ります。
広い世界を見たい！ 広い世界を知りたい！ 広い世界に出たい！
そう考えた花田さんは、その世界に足を踏み入れました。
そして、出会い系サイトX、と言ってもビジネスでのつながりを求めて利用している人が多そうなものですが、出会い系サイトXを通じて知り合った人たちにオススメの本を紹介していくのです。
カフェで待ち合わせをして、３０分とりとめのない話をする。その人の身の上や世界観をもとに、オススメする本を選んでいきます。
私の好きなことはこれだ！
相手の反応は様々。そっけない人もいれば、感激のメールを送ってくる人も。数を重ねるごとに、手応えのある反応が返ってくるようになります。
自分が勧めた本を読んだ相手が喜ぶ姿を見るたびに、
私の好きなことはこれだ！
という確信がわいてくる。そして、人の役に立ったと実感できて嬉しい。
Xでのオススメの本の紹介が進むにつれ、花田さんはそんな喜びに包まれていきます。
読書という極めて個人的な趣味が、誰かの役に立つ。
そこが、花田さんにとっても、読者にとっても、新鮮な発見だったのだと思います。
こんな人に絶対読んでほしい
中盤、花田さんがコーチングを受ける場面があるのですね。ここ、私の好きな場面なのですが。
ここでの花田さんの思いが、私が感じていることととても似ていて、めっちゃ共感しました。
どこに行っても周りと馴染めない自分を持て余し、この先どうなるのだろうかという不安がある。素敵な自分になりたいけど、素敵な人たちと対等に付き合える自信がない。辛いとかの弱音を吐いたら、聞かされる方が迷惑だよね、と思って、つい元気なふりをしてしまう。。。とか。
やだこれ、私のこと？ なんて思ってしまう。だから、この本をおもしろいと思ったのかもしれません。
同じ傾向がある人は、この本を、ぜひ読んでみてください。全力でおすすめ！
「どこかへ行く途中」の人
出会い系Xに集まる人のことを、
「どこかへ行く途中」の人
と表現しているのですが、この表現がとても気に入りました。今はまだ、全然満足いく自分じゃないけれど、それは「どこかへ行く途中」だからだと思うと、勇気が湧いてくるような気がしました。
でも、みんな「どこかへ行く途中」の人なんじゃないかな。向上したい、成長したいっていう欲があると思うので、人間には。
花田さんはじめ、Xに集まる「どこかへ行く途中」の人たちの思いに共感したり、反発したり、涙したりするのは、自分自身も「どこかへ行く途中」の人だからこそ、なのだろうな。
「好き」は生きる力になる
読書に限らず、自分が好きなことや得意なことが誰かの役に立つとしたら……
とても幸せですよね。
花田さんは、人にオススメの本を紹介する前と後では、別人のようになってるんです。
それは、好きなことに集中し、しかも、その好きなことで人を幸せにしてきた結果だと思う。「好き」は、生きる力になる、間違いなく。
だから、好きなことが特にない人は、好きを見つけましょう！
見つける、というより、思い出すという方がピッタリくるかも。
子どもの頃に好きだったもの、気づけばずっとやり続けてきたこと、など。思い当たることはありませんか？
もしかしたら、そこに、ほんとうに好きなことやほんとうにやりたいことが詰まっているかもしれません。
この本を読むと、そんな気持ちになってくるから不思議です。
おまけ：本屋さんに行きたくなる
私も本が好きです。花田さんに比べたら10分の1くらいだと思うけれど。
本屋さんを見ると、ついふらっと吸い込まれるように入ってしまうし、図書館も大好きです。最近は本屋さんもそれぞれ色々な工夫をしていて、そんなところを見るのも楽しい。
置いてある本に偏りがあったりすると、妙に愛着が湧いたりします。
品川駅のエキナカ、エキュート品川にあるペーパーウォールという本屋さんが、結構お気に入りです。品揃えの偏り具合が好き。
この本を読むと、妙に本屋さんに行きたくなるんです。これを書いている今、23時ですが、今すぐ本屋さんに行きたいもの（笑）
